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(チャミペン)サスム&(ユノペン)ホランイです。
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東方神起サランへ♡2人の妄想小説です。時々、R18有り。
虹を渡る 16
虹を渡る 16
虹を渡る 16










〜Changmin〜






その日から、寝る間を惜しんで書に没頭した。
それは全てに仮名表記があり、とても読みやすい代物で、さすが旦那様のご推薦と感心しきりだった。
正直な所、以前は芝居にそれほどの興味などなく、あえて言うなら生きる為の手段といったところだったろうか。
しかし書に没頭するうち、いつしか本気で役者として身を立てたいと気構えを持つようになっていった。

一人前の役者になりたい。
有名になって母に楽をさせてやりたい。
そしてほんの僅かでも、旦那様に認めて貰える存在になれたら、、、
と気持ちは日々高まってゆく。

もちろん何事も簡単ではない。
先日の大量解雇騒動で、お師匠様もとんと姿をお見せにならなくなり、芝居の稽古どころではなくなってしまった。
ひよっこの私が自身でつける稽古など正直たかが知れており、ましてや舞台に上がる伝なんて皆無。
これ以上旦那様にご迷惑をお掛けする訳にはいかないと思う一方、講じる策もなく正に八方ふさがりだった。


押し寄せる期待と不安に押し潰されそうな私は、ふと雨曇りの月のない夜空を見上げた。
どんよりとした低い空を見て、明日の晴天を期待できる筈などなかったが、まるで心の写し鏡のような空に一筋の光を探し求めていた。
見えないけれど、そこにある筈の美しい月。
見えねば見えぬほど、なお一層恋しく、私を虜にする月を。
だが分厚い雲が立ちはだかり、私を追い払おうとしている。
そんな現実に、また絶望しそうだった。
遥か遠くで光る月を、ただ綺麗だと眺める。
そんな細やかな希望すら叶わない、そんな人生はもう嫌だと、唐突に思った。
そんな人間らしい気持ちがどこから芽生えてきたのかは分からない。
ただ従い流されてきた人生は、震えるほど嫌になった。
抗い、切り拓いて生きて行くなどと厚かましいことは言わない。
だが、見えずとも存在しているそれ。
夜空に瞬くそれが見たいと思う心までは、もう縛られたくはない。
厚い雲を見透かすように目を細めて願う。


一目逢いたい


心は我儘に騒ぎ立てていた。
いつしか治りかけてきた腕の傷が、むしろ寂しいと思えてしまうほどに。
旦那様との繋がりなど僅かなもので、ここ数日はとんとそのお姿をお見かけすることもなかった。
見えない月に旦那様を重ね、恋しい気持ちを悪戯に募らせてゆくばかりで。


「翼がほしい  羽が欲しい  飛んで行きたい、、か」


赤姫のようにはなれっこない。
自分にはその身分も資格もないのだから。
たまにこっそりとそのお姿を拝見できれば、もうそれだけで十分なのに。


そんな事を考えている間に、また強く雨が降り出してきた。
さやさやと葉を揺らし、音を立てる。
軒下から手を伸ばし雨粒を受けると、ひやりとして染み込むようで気持ちがよかった。
指先が濡れ、袖口が濡れて。
いつしかぬかるんだ庭に足を踏み出して、大粒の雨がパチパチと身体を跳ねるのを楽しんでいた。
ぐっしょりと濡れそぼった着物は次第に重くのしかかり、まるで拘束されているかのような錯覚を覚える。
無気力感に襲われてしまった私は、いつしかその場に立ち尽くしていた。
最後にお見かけしたのはもう十日も前。
一目逢いたいと見えない月にそっと吐露した。
















「チャンミン、私だよ。分かる?」


薄ぼやけた視界に浮かぶ、見知った顔。


「、、はい。ソンミン様」


安堵を浮かべるその笑顔に引き摺られ、ほんの少し口の端を上げた。


「気分はどう?随分熱があるようだけれど、、」


額に触れた手はひんやりと冷たくて、思わず首をすくめた。
障子から覗く坪庭は、雨粒をキラキラと反射して眩しい。


「すまないね、勝手に部屋に上がったりして。何度声を掛けても返事が無かったもんだから心配になって」

「いえ、こちらこそすみません。今、何時でしょうか?どうやら寝過ごして、、」


身体を起こそうと頭を持ち上げると、天井がぐるりと回った。
ままならぬ自分の身体に漠然と現状を知る。
昨晩雨に打たれ、ろくろく髪も拭かずに床についたことをぼんやりと思い出していた。


「ああ、無理はいけない。ゆっくり休むといい。ユンホ様もそう仰っていたよ」

「旦那様がいらしてるんですか?」


思いもよらぬソンミン様の言葉に胸が騒いだ。
あからさまな動揺を、隠す余裕もない。


「うん。先程帰られたけどね。疲れが溜まっているだろうから、ゆっくりしろって」

「、、そうですか」


正に天国から地獄。
ソンミン様の言葉に一喜一憂してしまう己の馬鹿さ加減に心底呆れた。
これほど逢いたいと切望しながら、自らその機会を棒に振ってしまったのだから救いがない。
身体から力が一気に抜けて、胸はまるでぽっかりと穴が空いたように空虚となった。
現実から目を背けたいという思いからか、失礼を承知でゴロリと寝返りを打ち、ソンミン様に背中を向けた。


「すみません。少し眠ろうかと思います」


ポロリと落ちる涙。
熱のせいだと自分に言い分けをした。
話す気力なんてなく、自暴自棄とも言える状態に陥った私に、ソンミン様はあくまで紳士的に対応してくださるからなお辛い。


「うん、それがいい。じゃあ、ユンホ様からの預かり物をここに置いておくよ」


それは、屍に赤い血が勢いよく巡る、まさにそんな一言だった。
ソンミン様の立ち去る音を背中に聞いて、勢いよく向き直る。
すると意地悪く襖から顔だけ残したソンミン様と目が合って、顔から火を吹きそうなほど恥ずかしい思いをした。


「言い忘れていた」


ソンミン様は戯けた風にして、枕元をそっと指差した。


「チャンミンに見舞いだって。さすがにチョコレートじゃないけれど、あの朴念仁にしては気をきかせたものだよ」


そして何時もの優しい笑顔を見せて襖を閉じた。
恥ずかしさに目が回りそう。
暫し固まるも、それすらも凌駕する胸の高鳴りに、恐る恐る枕元を見た。
枕元には見たことのない薄桃色の陶器が置いてあり、蓋を開けて中を覗くと、色とりどりの小さな丸い粒達が顔を出した。


「金平糖、、」


青、黄、赤、黒、、、
それぞれの個体が自身を主張しつつ、行儀よく鎮座している。
その可愛らしさに胸が甘く溶けてしまいそうな錯覚に襲われた。


綺麗だ。
チョコレートではないけれど、これならば大切にとっておける。
チョコレートより、ずっといい。


心の中で何度もそう繰り返した。
それなのに、次第に何かが込み上げてきて、思わず下唇を噛んだ。
目から何かが溢れてきそうな予感に慌てて金平糖の蓋を閉じ、布団の中に潜り込む。


もう夏だというのになぜこんなにも寒いのか?
寒くて寒くて、悲しくなる。


頭痛は酷くなるばかり。
意識は朦朧とするし、目頭も熱くなってきた。
だがそんなものは知らぬとばかり、固く目を閉じて膝を抱え丸くなった。


私はなんと浅ましく欲張りな人間だ。


打ち明けられぬ胸の内。
意識が真っ暗闇に溶けるまで、胸は激しく痛み続けた。





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【2017/10/18 17:00】 | 虹を渡る | Comment(4) |
虹を渡る 15
虹を渡る 15
虹を渡る 15











〜Changmin〜







旦那様の部屋を出て三歩。
震える手でそれを強く握りしめた。
背に羽根が生え、ふわりと飛べるような気さえして、足元がどうにもおぼつかない。


『精進せよ』


澄んだお声が耳に木霊している。
包帯をした方の腕を強く握りしめた。
こんなにもみっともなく震える手を、差し出せる筈などなかった。
少なからずそれを無念にも思うが、正直今はそれどころではない。


「チャンミン」


再び廊下を歩き出すと、人懐こい声に話しかけられドキリとした。
大きな目で覗き込まれて、思わず声が出る。


「うわっ!」

「ひどいなぁ、人を化け物みたいに。こんな所で立ち止まって、どうかした?」


目を剥いて瞬きを繰り返す私を見て、ソンミン様はより一層に笑った。


「よほど良い事があった、、そうだね?」

「あの、旦那様がこれを、、、」


抱えた書をおずおずと差し出すと、ソンミン様の顔が綻んだ。


「なるほど」

「ソンミン様にも感謝しています。精進いたします」

「これも天の思し召しだ」


深く頭を下げると、肩をポンと叩かれた。
まるでヒョンとも思えるソンミン様。
心が緩んでしまうのは、ソンミン様のくれるこの屈託のない笑顔ゆえだろう。


「ありがとうございます」

「うん。しかし罪だなぁ。君のそれは無意識?」


不意に頬に手が伸びてきた。
驚くと共に直ぐそばの襖が開き、出てきた旦那様と目が合ってしまった。
三者無言で顔を見合わせて、旦那様はそのままあっさりと踵を返された。
違います!
と出そうになる声を、お門違いと締め殺し、耐えるしかなかった。


「これはまたいい時を狙って、、」


ソンミン様はポツリと言い、私は地蔵のように固まっていた。
その動揺たるや言い表しようもなく、羽根がもがれた、あえて言うならそんな気分だった。
私の落胆ぶりを見たソンミン様は、困ったように眉をひそめ、今以上に私を追い込む一言を言い放った。


「好きなの?ユンホ様のこと」


息が止まりそうになった。
鋭い目で正面から見据えられ、その迫力にごくりと唾を飲み込んで。


「いや、そんな、、まさか、、」


必死に旦那様への想いを否定した。
するとソンミン様は緊張を解き、ふわりと綺麗に微笑んで、優しく、恐ろしく、私を諭して下さった。


「愛情と憧れは似て異なるものだから、勘違いしても無理はないよね」


愛情と憧れ


こんなのはきっと悪い冗談に決まっているのに、緊張で胃がぎゅっと縮んだ。
こんな時身体は真っ正直なもので、一旦俯向いてしまうともう顔を上げられず、ただ貝のように黙り込むだけ。


「チャンミンならきっと良い役者になれる。頑張って」


そう励ますように肩を叩いて、ソンミン様は行ってしまわれた。
ソンミン様に知られてしまったろうか?と、慌てふためく自分を、もうどう処するべきかもわからない。

好意という感情は酷く曖昧なもので、ただの憧れならば、きっと許される。
そう何度も自分に言い聞かせても、そんなものはただの欺瞞にすぎないと、心が突っ撥ねてしまう。
それでもなお唱え続けた。


この気持ちは、ただの憧れなのだと。












〜Sungmin〜




「ユンホ様、ソンミンです」


思った通り、返事はない。
無言の承諾という事にして、勝手に襖を開けた。


「誰の許可があって入るのだ?」


中にいるのは、どっかりと胡座を組んで座る、眼光鋭く厄介な男。


「随分とご機嫌斜めじゃないですか。どうかしました?」


白々しくも、分かりきった事をあえて惚けた。
しかし、なんと分かりやすい人だろうか。
への字に下がった口角と嫉妬に燃えるその瞳。
ご自分がどんな顔を晒しているのか、この人はきっとご存知ない。
私も日頃こんな顔を晒しているかと思うと、全くもって居た堪れなくなる。


「別に何もない。お前こそ何の用だ?」


さぁ、今度は私が醜態を晒す番と、無理やり笑顔をこしらえた。


「奥様との芝居観覧、いつにされます?ご連絡いただけなくて、気になって落ち着かない」

「そんなのはどうでもいい。適当にお前が決めろ」


貴方はさも平然と、どうでもいいだなんて仰る。
そのどうでもいい事が、毎晩私を苦しめているというのに。


「はい。分かりました。適当に決めますからね」


幸せにしてくれないと困るのだ。
こちらは未だ一寸たりとて想いが減らないのだから。


「後から文句は受け付けませんよ」


私の気持ちなんざ、お見通しのくせに。
あの人のことは気にもかけず、男なんぞにうつつを抜かすユンホ様は、全くもって許しがたい。


「勝手にしろ」


そんな事を言いながら、外に視線を投げるユンホ様の横顔は、なんとも言えぬ憂いを帯びていた。
こんなユンホ様を見るのは正直初めて。
複雑な想いが交錯して、どうにも悩んでしまう。
ユンホ様の幸せを願いながら、彼の方の幸せをも願わずにはいられない私は、やはり不幸だと言わざるをえない。
人の心は儘ならぬもの、、、
いつか来るべき不幸だったと、そう割り切れるなら幾分楽になれるだろうに。
今更ながらに思ってしまうのだ。
どうか取り越し苦労であってほしいと。


貴方には、あの人を幸せにする義務がある。


「はい、勝手にします」


私には、それを見届ける使命があるのだから。






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【2017/10/17 17:00】 | 虹を渡る | Comment(6) |
虹を渡る 14
虹を渡る 14
虹を渡る 14







〜Yunho〜





「後で私の部屋に。渡す物がある」


それは茶屋に帰り着くほんの少し手前での事だった。
振り返る勇気はなく、前を向いてぶっきら棒に言った。


「はい」


耳に残るその未完成な声に、なんとも言えぬ気持ちになる。
明らかにおちてゆく歩調。
手を解かれて、今更振り向く愚かぶりに自己嫌悪した。


脳裏に繰り返しよぎる、愛らしい笑顔。
たかだか蕎麦を戸惑い食べる仕草。
子供騙しの飴細工に夢中になる無防備な横顔。
突如湧いた独占欲と熱く火照る手のひらに正直戸惑っていた。
馬鹿げている、と、慌てる己に慌てる。
一時の気の迷い、そう力尽くでねじ伏せんと躍起な自分がいた。



「おかえりなさい」



玄関の戸をを開けた途端、聞こえてきたのはソンミンの飄々たる声だった。
やはり大分慌てていたのだろう。
バツの悪さにうまい言葉が見つからず「ああ」とだけ返して部屋へ閉じこもった。
下手な返しだったと落ち込むも、時すでに遅し。
部屋中央に座り込み、繋いだ手で口元を覆った。



参った、、、



掌はじっとりと汗ばんで、心臓は機嫌良く跳ねていた。
緩む唇をぎゅっと掴むと、指の間からは甘いため息が漏れた。












「二人でどちらへ?」


部屋に閉じ籠って暫し、ソンミンが顔を出した。
その飄々たる態度がむしろ怖く、とにかく誤魔化してみることにした。


「別に」

「隠されると、より知りたくなるのが人間ですよ」

「、、、まともな着物を数枚あつらえた。赤いおべべでウロつかれては困るのだろう?」


すると、ソンミンは呆れたような顔をして、あからさまなため息を吐いた。


「ありえない。私の忠告は見事無視してくださったようだ」


「そうではない」と反論したいが、なんとも後ろ暗い気持ちが私の口を閉じさせた。
あの子の喜ぶ顔が見たかったとは、口が裂けても言うべきでないのは明白だろう。


「自覚が足りない。貴方にも、チャンミンにも」

「そうでない。ただ不憫と思って、、、」

「中途半端な慈悲を掛けるのは、むしろ悪。あの不幸な子をどうなさるおつもりか?」

「どうもない。ただ普通の生活が送れるようにと、、、」

「ならば、せめて着物を貸すべきだった。あれじゃあどう見ても旦那様とそのイロだ。」


あ。
と、思わず声が出た。
確かに、あの着物はまずい。
返す言葉もなく、結局再び黙り込んだ。












「あの、チャンミンです」


するとその刹那、控えめな声が廊下から聞こえてきた。
ソンミンはジロリと私を一瞥し、勝手に中に招き入れる。


「いらっしゃい。何かご用かな?」

「あの、、旦那様に、、、」


事情を知らぬチャンミン。
だが勘のいい子で、すぐに不穏な空気を感じとったか言葉を濁し、こう続けた。


「あの、出直してきます」


だがソンミンも逃さない。
お得意の笑顔で易々と引き止めた。


「いやいや、構わないよ。気兼ねは無用だ」


部屋に流れる妙な空気。
チャンミンは居た堪れない表情で、促されるまま畳の上に小さく座った。
すると気に入った着物はあったのか、昼飯は食べたのか、と柔らかな口調ながらも質問攻めにされている。
一々真面目に答えるチャンミンと、馴れ馴れしく微笑みかけるソンミンになんだか少し気分が悪くなった。


「おい、いい加減にしろ」


あからさまに不機嫌な声を出すと、ソンミンは怯まず言い返した。


「無粋な。私とチャンミンは一夜を共にした仲ですよ。まさか焼きもちですか?」


するとチャンミンの顔がみるみるうちに真っ赤に染まり、私はギリッと奥歯を噛む。


「あの、御用とはいったい何でしょうか」


一触即発の空気を取りなす様に、チャンミンが割って入った。
困り切ったチャンミンの顔に返す言葉に詰まり、あえて憮然と邪魔者に合図を送る。
ソンミンに向かい、手でゴミを払うような仕草。
あっちへ行け。
すると、引きつった顔でソンミンは席を立った。


「茶でも淹れてきます」


邪魔者は最後までギロリと私を睨みつけ、見てるぞ?!と言わんばかりの顔をしていた。
やっと出て行ったと安堵するも反面、賑やかな男が去り、室内が急に静まり返ってどうにも落ち着かなくなる。
場を和ます上手い会話も見つからず、額にはじんわりと汗が滲んできた。
つまらぬ男、そんな評価はやはり不本意に違いなく、ゴホンと咳払いの後、早々に帳簿の下から“要件”を取り出した。


「用とはこれだ。あれよりは幾分マシだろうから」


それは昨晩夜を徹して仮名を振った歌舞伎の書だった。
影の努力は、あえて口にしない。


「役者になるのだろう?甘くはないぞ」


そうさらりと言ったつもりで視線を落とし、手近な帳簿をめくったり閉じたりを繰り返した。
柄にもなく、緊張していたようだ。
反応が気になって仕方がなかったが、視線を上げることは出来なかった。


「旦那様、、、」

「用事はそれだけだ。精進せよ」


ぶっきら棒な物言いに自分自身呆れるが、
元来不器用なのだから仕方がない。
だが微動だにせず、黙り込んでしまったチャンミンが気になって、ようやくチラリと目線を上げた。


「はい」


すると、怖いほど真っ直ぐな瞳が私を見ていた。
床に落ちるぞと軽口でも叩けたらいいのだが、言葉が見つからなかった。
思わず見惚れてしまいそうな自身を叱咤し、手にかいた汗を拭いながら格好つけて吐いたセリフはこうだ。


「勘違いするな?芽が出ぬと判断すれば、いつでも里へ帰す」


不器用極まれり。
正直自分でも呆れている。
だがチャンミンは怯むことなく、男を見せた。


「精進致します。必ずご恩に報います」


そのハキハキとした口調に感じた強い決意。
この子は大丈夫。
そう心の奥底で確信していた。


「それは感心な心組だ。だが、先ずは傷を治さねば。役者は身体が資本だからな。さぁ、傷を見せてみろ」

「傷は先程ソンミン様に診ていただきました。お心遣い感謝致します」


差し出した手は、みっともなく空を彷徨い落下した。
ソンミンのしたり顔を思い、如何ともし難い苦味が口に広がる。
口先が、鳥のようにツンと尖った。





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【2017/10/16 17:00】 | 虹を渡る | Comment(4) |
虹を渡る 13
虹を渡る 13
虹を渡る 13







〜Changmin〜





江戸の街並みなんて目に入らない。
人波を掻き分け歩く大きな背中が欲する全てで、強欲すぎる望みでもあった。





「天ぷら蕎麦にする。お前は?」

「はい、ええと、、」


そこは威勢良く注文の飛ぶ活況な蕎麦屋。
旦那様は座り込むなり天ぷら蕎麦を注文した。
勝手のわからない私は戸惑って、店内をキョロキョロ見回すと、旦那様が助け船を寄越してくれた。


「他には花巻蕎麦に、あんかけ蕎麦。あられ蕎麦なんていうのもあるぞ?」

「花巻蕎麦とは何でしょうか?」


蕎麦に花。
そのなんとなく不可解な組み合わせが気になって、旦那様に伺ってみた。


「花巻蕎麦は、ようするに蕎麦に海苔がかかったやつだ。海苔をさくらやらの花弁に見立て、花舞を花巻と付けたらしい。」

「蕎麦に海苔の花びらですか?さすが江戸ですね」


にわかに関心すると「だがな、、」と旦那様は熱弁をふるいだした。


「花弁と言っても、所詮は海苔だ。天ぷらの方が美味い。ここの天ぷらは芝海老が絶品で、、」


たかが蕎麦。
されど真剣に語る旦那様。
いつもの泰然自若な旦那様とは裏腹なその姿に、自然と頬が緩んだ。
黒目がちな瞳はキラキラとして、ふっくらとした朱色の唇がよく動く。
まるで幼子のような無垢な表情から、目が離せなかった。
話し終えると、旦那様は所在なさげに首元を掻きながら言った。


「、、、とにかく天ぷら蕎麦でいいか?」


私の視線が明らさま過ぎたろうか?
私が小さく頷くと、やけに大きな声で天ぷら蕎麦を注文した。









ズルズルと威勢良く蕎麦を啜り、あまり大きいとは言えぬその口に、大きな芝海老のかき揚げを頬張る。
じわりと滲み出たつゆで口元を汚し、頬を大きく膨らませて食べる姿は懸命で愛おしい。
全くこんなものを間近で見せられるのだから堪らない。
正直蕎麦の味なんて、ろくろくわかりもしなかった。


「どうだ、美味いだろう?」


それは、まるで黒い半月。
唐突に寄越された旦那様の視線に心臓が跳ねる。
まだ一口も減らない天ぷらを慌てて口に突っ込み、コクリと頷いた。


「そうか、ならば良かった」


惜し気もなく無防備な笑顔を晒す旦那様。
こんなにも忙しない食事は、なかなかないだろう。
人目を盗んで貴方を見つめ、視線が合わされば忽ち逃げを打つ。
腹と言うより胸がいっぱいだった。


「あー、美味かった」


蕎麦を食べ終えて、満足そうに寛ぐ旦那様。
お待たせしてはならぬと、蕎麦を勢いよく頬張ったが運の尽き、ゲホッと噎せて旦那様に笑われてしまった。


「慌てずともよい。ゆっくり食べなさい」


自分だけに向けられる、優しい笑顔。
込み上げるのは、ひたすらな羞恥と息苦しいほどの幸福感だった。
自分とは無縁のその感情に、押しつぶされそうでなんだか怖い。
こんな邪な気持ちを気取られてはならぬと俯いて、そしてまた小さく噎せた。


「ご馳走様でした」


旦那様に深々と頭を下げ、出来うる限りの笑顔を向けると、旦那様の物言いたげな視線とぶつかった。
ジッと私を見つめては「また来よう」と優しく微笑んで下さった。


痛い。
胸の端ががチリリと焦げた気がした。
馬鹿馬鹿しいと自分を叱責するも、心がどうにもままならない。
席を立ち、先を歩く大きな背中に、これは幻だと呪文のように繰り返した。


「さぁ、帰るか」


蕎麦屋の外、人の行き交う往来で、今度は唐突に腕を差し出された。


「え、、?」


思いもよらぬ旦那様の行動に、声も身体も不意に強張った。


「先は悪かった。手首なんぞ掴まれては誰でも嫌に決まっているのに。だがこの人混みだからやむなし。迷子などは面倒極まりないし、お前が掴まれ。腕が嫌なら帯でも袖でも、、」


どんなに戒め、自分を閉じ込めようとしても、スルリ、スルリと抜けてくる。
貴方にかかれば、私を堕とすことなど赤子の手を捻るも同然に違いない。
不埒にも妄想する、太くしなやかな二の腕の感触と体温。
もし許されるのなら、私とてしがみつきたくて仕方がないのに。


「ありがとうございます。ですが、本当に大丈夫ですから」

「、、では行こう」


旦那様はそれ以来、振り返ることはなかった。
ただ先程より歩調を緩めて、周囲を散策するように歩く。

優しい方なのだ。
優しくて酷く罪な方。

麗らかな午後の陽射しが、旦那様を照らして眩しかった。
お天道様のような方だと思う。
だからこそ、眩しすぎる。
まだ色濃く短い影を目で追いながら、少しだけ距離を置いて歩いた。











「戦国の世に名を轟かしたかの名馬、鬼鹿毛でござぁい!」


それはほんの一瞬の出来事だった。
見事な馬の飴細工に、わっと子供の歓声が上がる。
艶やかで真っ白な飴細工の馬は繊細ながら躍動的で力強く、そのあまりの出来栄えに思わず見惚れてしまった。
だが、それが実にまずかった。
江戸人の足は早く軽やかで、景色は止まることを知らない。
そんな世間に不慣れゆえの過ちなど、知る由もなかった。
気付いた時は既に遅く、そこに有ろうはずの姿が見当たらない。
不安に駆られ、狼狽えつつ辺りを見回した。


やってしまった、、。


不慣れな江戸の大通り。
旦那様のお心遣いを無下にした挙句これだから救えない。
慌てて駆け出そうとすると、後ろから急に腕を掴まれた。


「何処へ行く?」

「旦那様、、」


ほら見たことか。
と旦那様は大袈裟にため息を吐き、私の手を引いた。


「帰ろう」


不安か焦りか、視界が滲んでやむなく俯く。
優しく握られた手のひらがじんわりと熱く、南無三と唱えそっと握り返した。



ああ、神は敵か味方か、、、



賑わい華やかな江戸の町は、私たちを造作なく飲み込んだ。
二人は、千変万化の景色の一点となった。






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【2017/10/15 17:00】 | 虹を渡る | Comment(4) |
虹を渡る 12
虹を渡る 12
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〜Changmin〜







ああ、こんな事になるとは



己の軽はずみな行動に後悔しきりだった。
ここは大恩ある方の経営される芝居茶屋で、
見習い役者が自室で呑んだくれるなど、確かに言語道断はなはだしい。
脳裏に浮かぶのは怒りに歪むあの美しいお顔で、後悔の二文字が頭から消える事はなかった。


もうここにいられなくなるかもしれない。


正に暗雲垂れ込める胸の内。
心は大きな黒雲に覆われて、既に土砂降りの様相だった。
日の光一筋差さない行く末を思い、ただ無様に狼狽えるばかり。


この先、どう家族を養ってゆくのか?


それがまず第一の懸念事項で、そしてまた別の想いもあるからより難儀だった。


きっと軽蔑されたに違いない、、、


不届きな旦那様への想いが自分を窮地へと追い込んでしまう。
クズにも心があるという無体さに、仏をも呪いたくなるというもの。
闇雲に部屋中を歩き回り、何度も天を仰いだ。


「いるのか?」


すると、まさかまさかの旦那様のお呼びに、心臓が飛び出しそうになった。
思わず襖に耳をつけ、息をひそめる。
だが聞こえるのは、荒ぶる鼓動の音ばかりで、思い切って襖を開けるや否や両手を床につき、思いつくだけの謝罪を口にした。


「旦那様!!あのっ、申し訳ありませんでした!昨夜の事は重々反省して、、」


顔など到底上げられず、ただ床についた手に力を込める。
すると頭上で衣摺れの音が聞こえ、旦那様のお声がすぐ近くから聞こえてきた。


「体調は?酒は残ってはおらんのか?」


下げた頭に血がのぼる。
もはや緊張なのか興奮なのかは判別不能だった。
恐る恐る視線を上げると、すぐ近くにあった黒い瞳とぶつかって、思わず息を飲んだ。


言葉が出ない。
この瞳に見つめられては、もはや為す術がない。


「顔色はいいようだな」


まじまじと見つめられて、耳まで熱くなる。
阿呆のように見惚れていると、旦那様の手が私をひょいと立ち上がらせた。


「では、ついて来い」


二の腕を引かれ、鼓動が勝手に狂喜乱舞した。
大きな手で手首を掴まれ足がもつれる。
それは、めくるめく夢のような現実で、戸を開けた先の明るい日差しにくらりと目が眩んだ。

















「どれが好みだ?イマイチパッとしないな」


そんな風にブツブツと独り言を言いながら、旦那様は次々と私に反物を押し当てた。


「ああ、これがいい。どうだ、店主」

「はい、とてもお似合いかと存じます」

「お前はどう思う?気に入った物があれば遠慮はいらぬから申せ」




あの後、まるで御用となった罪人のように腕を引かれ、茶屋から大分離れた呉服屋へと連れてこられた。
道中、真っ赤な着物を着た私の手を平然とした顔で引く旦那様に唖然とさせられるも、周囲から降るぶしつけな視線の雨、霰から逃れんと背を丸め、俯いて歩いた。

久方ぶりに歩く江戸の往来はまるで違って見えた。
堂々と道の真ん中を闊歩する旦那様と、どう見ても男娼然とした私。
その気恥ずかしさは否めなかったが、同時に、経験した事のない不思議な感情が湧き上がっていたのも事実だ。
これが優越感と言うものか?
だが旦那様の評判を地に落とすのではと気が気でない私を尻目に、旦那様は実に清々しいお顔でこんな事を仰った。


「久々の晴天だな」


黒い三日月のように細められた瞳。
否応もなく、私は再び恋に落ちた。















「チャンミン、これでいいのか?」


チャンミン。
旦那様が突然私を名で呼んだ。


「え、あの、、はい」


夢のような出来事の連続に、思考が上手くついて行かない。
旦那様と店主とのやり取りをぼんやりと聞き、ただただ見惚れるばかりだった。
そして、めくるめく現実は、更にも続いた。


「さぁ、行くか」


店を出て、旦那様はさも当然の顔をして、再び私の手首を掴んで歩き出した。


「あのっ」


周囲の目が怖い。
こんな不自然な現実は到底受け入れられず、思い切って声をかけた。
これ以上旦那様に恥をかかせることは、さすがに自身が納得いかない。


「なんだ?腹でも減ったか?」


旦那様は歩調を緩め、顔だけくるりと此方を向いた。


「いえ、あの、、手を、、」

「ああ、今日も人混みでうんざりする」

「はい。いや、あの、手を、、」


通じているのかいないのか。
旦那様は掴んだ手を緩めようとはしなかった。
徐々に私を追い詰める焦りと戸惑いに、たらりと額に汗が伝う。


「腹が減ったな。飯でも食おう」


旦那様はカラリと言って、また歩き出した。
手首はより強く握られている。
その手は温かで、私を駄目にしそうで怖かった。
許されるのなら、今暫く、と分不相応な望みを抱いてしまう自分が怖かった。
だが私は、やはり愚かな人間だった。





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テーマ:二次創作(BL) - ジャンル:小説・文学

【2017/10/14 17:00】 | 虹を渡る | Comment(8) |
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